TNT

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翻訳:安積 美記、 竹内 幹、大谷 誠
Translation:  Miki Asaka, Tadashi Takeuchi, Makoto Ootani

時は1982年。またひとつ音楽の歴史が作られようとしていました。ダグ・インゲブリクトセンは新しいバンドを設立しディーゼル・ダールが合流し、しばらくしてベースにシュタイナー・エイクムが加わりました。

インゲブリクトセンはギタリストのオーディションをいくつか行い、ロニー・ル・テクロを見つけました。ある夏の日、正確には1982年6月2日がTNTの公式な誕生日となります。デビューアルバムは1983年2月の終わり頃にリリースされ、3月初旬にはヴェーゲー・リスタ(ノルウェーの音楽チャート)にチャートイン。当時ノルウェー語で歌われるロックは珍しく、ノルウェー国内で大きな注目を集めました。このデビューアルバムには「USA」、「Eddie」、「Harley-Davidson」といった重要な曲が含まれ、ファンや音楽文化メディアの評論家たちの間ではクラシックとなっています。

TNTは次作「Knights Of The New Thunder」では英語で歌うことを決めました。シュタイナー・エイクムはバンドを去り、新たなベーシストとしてモーティ・ブラックという芸名でモーテン・スカーゲットが加わりました。ヴォーカルのダグ・インゲブリクトセンは次作用の曲作りをしていましたが家族や他のプロジェクトの為にバンドを脱退する決意を固めました。

マイケル・シェンカー・グループでの活動で知られている英国人シンガー、ゲイリー・バーデンが航空券とスーツケースを片手に出発しようとしていたそのとき、ディーゼル・ダールとTNTから旅のキャンセルを告げられました。

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Photo: Arne Nordtømme

ロニー・ル・テクロは言います。「俺たちはまるで天国から聴こえてくるような独特な歌声を聴いて、バンドに加入してほしいと彼をノルウェーに招待したんだ。」 声の主はアメリカ人シンガー、トニー・ハーネルでした。1984年5月、彼がTNTのマイクを握ることになりました。当時どうやってデモテープがTNT側に届いたのか分からない、とハーネル自身は言います。

トニー・ハーネルはTNTを聴き、これこそが自分のやりたかった音楽だと感じていました。TNTのテープをトニー・ハーネルに渡したのはマイク・ヴァーニー(アメリカ人ミュージシャン、プロデューサー、興行主)でした。こうしてアルバム「Knights Of The New Thunder」は1984年にリリースされました。9月にアルバムがレコードショップに並ぶと同時にそのアルバムジャケットは物議をかもし回収され、新たなジャケットとともに1984年11月2日がリリース日となりました。

このアルバムからは「Seven Seas」のビデオが作られヒットし、ロックファンの間では「国民的アンセム」のようなクラシックと捉えられています。

3枚目のアルバム「Tell No Tales」は1987年に発売。ヒットシングル「Everyone’s A Star」、「10,000 Lovers (In One)」が生まれました。「Tell No Tales」アルバムは特にアメリカでは非常に大きなブレイクスルーとなり、ビルボードのトップ100入りという偉業を成し遂げました。

6月23日火曜日、TNTは何十年にも渡り欧州のポピュラー音楽の発展にとって非常に重要な場所であり続けたロンドン・マーキークラブに出演しました。そこは音楽史の中で最も重要なミュージシャンたち、現在も強力な音楽を発信しているアーティストたちが集う場所でもあったのです。

TNTがこのアルバムでスペルマン賞のロック部門を受賞したのもこの年でした。「10,000 Lovers (In One)」のビデオは巨大な成功を収め、TNTはアメリカとヨーロッパを広範囲にツアーしました。

1988年の初め、ディーゼル・ダールは自身の音楽を作る新バンド設立のためTNTから去ることを選択しました。ケネス・オーディンという芸名でモーテン・スコグスタードがTNTの新しいドラマーとなりました。しかし1989年にアルバム「Intuition」がリリースされしばらくして脱退。このアルバムはポップな方向に舵を切ったアルバムでしたが、多くのファンにとってお気に入りの1枚となっています。

この時期TNTは、バンドの発展をめぐっていくらかの不満があり、不本意ながら少し立ち止まることになりました。

1992年には新譜「Realized Fantasies」そして「Three Nights in Tokyo」がリリースされました。ドラマーはアメリカ人のジョン・マカルーソでしたが、彼はスタジオアルバム1枚で去りました。その後また長いブレイクのあとベストアルバム「Till Next Time – The Best of TNT」が1996年にリリースされました。

ドラムにフローデ・ラモイ、そしてキーボードにダグ・ストッケを正式メンバーに迎え1997年「Firefly」を発表。TNTにとって大きな成功とはなりませんでしたが、このアルバムが非常に過小評価され見落とされがちだと感じているファンが世界にはたくさんいます。「Angels Ride」、「Month of Sundays」、「Soldier of The Light」といった強力な曲が収められています。「Daisy Jane」という素晴らしいバラードも忘れてはいけません。アメリカでは、「Angels Ride」と「Heaven’s Gone」は神を冒涜しているとしてアルバムからカット(!)されました。

Photo: Petter Stene

Photo: Kenneth Baluba Sporsheim

Photo: Kenneth Baluba Sporsheim

Photo-Vegar Bakken-Sid Ringsby

Sid Ringsby – Photo: Vegar Bakken

1999年になり、TNTはアルバム「Transistor」を制作。ある意味で実験的なサウンドをもった楽曲はファンを驚かせました。この時期バンドは大きな動きを起こすことができず、もうコンサートもできなくなっており、メンバー達は音楽シーンの中で他のプロジェクトや他のアーティストとのコラボレーションを進めることを選択しました。

2000年代初頭にはファンが待っていた「ディーゼル機関車」がついに戻ってきました。2003年、コンピレーションアルバム、「The Big Bang – The Essential Collection」でドラマーにディーゼル・ダールが復帰。同年、EP「Taste」がリリースされましたが、日本でのみでした。「Taste」アルバムは日本以外の国のファン達にとって人気のコレクターズアイテムとなりました。悪名高い(!)日本版発売時のボーナストラックについては他のアルバムでも同様となっています。

アルバム「My Religion」は2004年にリリースされました。このレコードは「Tell No Tales」期のようなヴィンテージTNTと、現代的・近代的な影響のバランスが絶妙で、ファンには嬉しいものであったことがレビューから読み取れます。「She Needs Me」におけるロニー・ル・テクロの奏でるリフは楽器をプレイする人たちの間でも人気です。またクラシックになりえるバラード「Perfectly」ももちろん用意されています。タイトル曲「My Religion」はいつも観衆を惹きつけます!

モーテン”モーティー・ブラック”スカーゲットは2004年の長いツアーの後TNTから去りました。2005年にヴィクター・ボルグが正式ベーシストとなるまで、シド・リングスビーが代役を務めました。同年TNTはリングスビーのベースによりアルバム「All The Way To The Sun」を発表しました。

2006年、トニー・ハーネルが個人的およびプロフェッショナルな理由でバンドを去ります。もうこれで最後だとこのとき彼ははっきりと言及しました。「Live in Madrid」とタイトルがつけられたライブCD/DVDが2006年秋にリリースされました。ハーネルは脱退前にポラー・ロック・フェスティバルで最後のコンサートを行いました。それまでTNTは新ヴォーカリストのトニー・ミルズとともにツアーを行っていました。2人のトニーは「Harley-Davidson」を一緒に歌ってファンに別れを告げるとともに、後任者にマイクを受け渡しました。

アルバム「My Religion」(2004年)でTNTは以前の少し「グラム」的な方向に戻ってきました。「All The Way to the Sun」(2005年)もそういった作風に近いものでした。その後に続く「The New Territory」(2007年)と「Atlantis」(2008年)はトニー・ミルズのヴォーカルで発表されました。ファンの間では賛否両論が巻き起こりました。アルバムはザ・ビートルズとクィーンに影響を受けた作風でした。ディーゼル・ダールいわく、アルバム「Engine」(2010年)は昔のTNTサウンドを再現しようという試みでした。

2008年12月12日、ダグ・インゲブリクトセンは50歳の誕生日を迎えました。この日ダグのほかロニー・ル・テクロ、シュタイナー・エイクム、ディーゼル・ダールというオリジナルメンバー全員が揃い、一夜限りの再結成を果たしました。

12枚目のスタジオアルバムは2010年「A Farewell To Arms」(ノルウェーでは「Engine」)というタイトルで、トニー・ミルズのヴォーカルによりリリースされました。

2013年8月5日(VG誌、Stein ØstbøとCamilla Norli)、2006年以来メンバーであったトニー・ミルズがTNTから脱退したことが発表されました。ロニー・ル・テクロからはTNTが8月17日にトニー・ハーネルと共に復活することが語られました。

2011年4月27日、キーボード奏者のダグ・ストッケが死去。彼は1987年4月からTNTと共にツアーをし、1992年の「Realized Fantasies」アルバム以降2010年の「A Farewell To Arms」までの全てのアルバムに参加していました。

キーボードには2011年からロジャー・ギルトンが加入しています。

Photo: Kenneth Baluba Sporsheim

2011年9月17日マドリードのサラ・ハイネケンではTNTのライブが映像に収められましたが、今日に至るまでDVDのリリースはされていません。

2012年6月2日、TNTは結成30周年を祝い、地元トロンハイムのクラリオン・ホテルでコンサートを行いました。バンドはTSO – トロンハイム・シンフォニー・オーケストラと共に演奏し、ダグ・インゲブリクトセンとトニー・ハーネルがゲストシンガーとなり「Seven Seas」を共に歌い、オーディエンスを喜ばせました。

ヴィクター・ボルグは自身のプロジェクトのため2012年12月にバンドを去り、シド・リングスビーが代役を務めました。ボルグは2013年にTNTに戻ったあと2015年までバンドに貢献しました。

2013年夏にはトニー・ミルズがTNTを辞め、トニー・ハーネルが再びマイクを握ることになりました。2015年1月には再度脱退しますが今度はそこまで長くなく、2016年5月には復帰しました。「Tell No Tales」アルバムの30周年に合わせ、TNTはディーゼル・ダール、ロニー・ル・テクロ、トニー・ハーネル、そして新ベーシストのオーヴェ・フセモエンという布陣で記念ツアーに出ました。

TNTが新譜を制作するというニュースはファンの間で大きな期待と喜びをもって迎えられましたが、その後2017年10月、TNTとトニー・ハーネルは再び別の道を進むことに合意したとの話が伝わりました。

2017年の初冬までTNTのニュー・シンガーが誰になるのかは隠され、バンド自身もその件に関しては期待を煽らせていました。多くのファンがFacebookのTNTページでの議論に参加していました。

2017年11月22日オスロ・スペクトラムでTNTは伝説のバンド・スコーピオンズのオープニングアクトを務め、ついに約束通り新ヴォーカリスト、バオル・バルドー・バルサラがTNTの新しい声として誕生したのです!

2018年6月8日、“XIII”とシンプルに名付けられた13枚目のアルバムがリリースされました。その年ノルウェーではいくつかのコンサートが行われました。2018年1月のオスロ・ロックフェラーでのコンサートや、ドランメンのユニオンシーンでのライブはバオル・バルドー・バルサラをお披露目する機会となりました。オーディエンスはバルサラを暖かく迎え入れ、ファンお気に入りの名曲達や「We’re Gonna Make It」、「Can’t Breathe Anymore」、「Fair Warning」といった最新の曲に熱く聴き入ったのは疑いもありません。またTNTは同年6月モー・イ・ラーナで行われたイフィヨルド・フェスティバルではヘッドライナーのひとつを務めました。夏の天候は味方してくれませんでしたがTNTはいつものように熱く大音量でプレイしました。2018年のもう一つのハイライトは、観客がダブル誕生日祝いと呼ぶようになったラウフォスのレトロバー&シーンで行われたショーです。比較的小さな会場にはあちこちから集まった熱心なTNTファンで埋め尽くされ、ファンがお気に入りを間近で見ることができる音楽パーティーとなりました。

2019年9月16日ロックハイム・ホール・オブ・フェイムでTNTはロックの殿堂入りを果たし、直後の9月28日ハーマルのKulturhusで行われたコンサートはお祝いとなり、また故トニー・ミルズを偲ぶ忘れられないコンサートとなりました。ロニー・ル・テクロは驚異的な感性で「God Natt, Marie」のインストゥルメンタル・バージョンを演奏しました。その場にいた誰もが体験したこの貴重で感動的なトリビュートはYouTubeで確認できます。

その日の夜にはバオル・バルドー・バルサラを「もっとよく知るため」のインタビューが行われました。笑顔でリラックスしたシンガーは経験した出来事や音楽に対する思い、自身の音楽人生についての貴重な情報や、TNTのことはもちろん、今後のツアーの事などについても語っています。

Video & editing: Birger Teigen – Interviews: Line Elizabeth Sagbak

Birger Teigen氏がカメラの後ろにおり、筆者がインタビュアーとしてベストを尽くしました。

2020年4月現在、音楽と文化の世界ではあらゆるイベントがロックダウンで中止になるという非常事態となっています。ミュージシャン達、ステージの裏方で働くクルーはもちろん、ツアーに携わるスタッフ達に厳しい現実を突きつけています。世界中の音楽ファンは忍耐強くじっと待っています – また一緒に最高のTNTライブを体験できる日が来るのを!

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